Stockholm

2004年初夏。ストックホルム
鮮やかな緑。淡い黄色の壁。流れる雲。時々吹く風の心地よさ。
街外れの道路沿いで行き先の地図をみていた。
通りかかった古いシトロエン。窓から顔を出して、こっちに向かって何か叫んでる。
「何?聞こえないよ」
車は、方向を変えてこっちへ。ぶるぶるっと音を立てて止まるシトロエン2CV
道路脇の小石が弾ける音。芝生の匂い。二人組の笑顔の若者。
「どうしたんだい?」「ここに行きたいんだけど・・・」
「どれどれ・・・ああ、この先すぐだよ」
「なにをしているの?」
「いくつかの国で優れたランドスケープの設計やその保護について調べているんだ」
「へえ、それは楽しそうな仕事だね!」
「うん、ありがとう、とても助かったよ!」
旅先でこんな風に親切にされると、M国やI国で幾度となく騙されたり騙したりしてきた僕は、警戒を強める少し悪いクセがあるのだが、なんという屈託のない笑顔の親切な若者たち。車から手を振りながら、ぶるぶる音を立てて元来た道を去ってゆく。
このとき僕は、とても爽やかな気分になった。見上げる青空。
それ以来、地図を見たり迷ってる旅行者の人がいたら、僕も助けることにしてる。
ストックホルム郊外にある、森の墓地へのアプローチ。エリック・グンナー・アスプルンド(Erik Gunnar Asplund), シーグルド・レヴェレンツ(Sigurd Lewerentz) 設計。この日、僕はここに何時間も佇むことになった。