Kashi

tapio2006-03-17

1995年5月。カシュガル(喀什)。中国の最西端の街。パキスタンタジキスタンのボーダー近く。ウルムチトルファン経由。
バスを降りたら、別世界だった。道行くおばあさんに宿の名前を伝えて、場所を聞いたが、そんなのは知らんという。漢字でかかれた長い名前を見せると、「ああ!老賓館!老賓館!」という。このホテルには、たぶん別名があり、住んでいる人たちには古いホテルと呼ばれていたのだろう。街の中は、イスラム圏らしく、いたるところで炭と羊の焼ける匂いがする。
夜、砂嵐。窓に砂がぶつかる音。
ここは、中央アジアの貿易の十字路なので、本当に活気がある。市場と職人の街。帽子、楽器、スパイス、木陰のBarber、見たことのない柄の布。なにもかもわくわくするものばかり。古い市場の中には、街頭テレビがあって、多くの大人や子どもたちが、カンフー映画を見ていた。道路端で焼いている羊の串焼き(カバブとかサテ)は、美味しいのでよく食べた。スパイスがとても羊に合う。
昼、お腹がすいたので、小さな店に入り、ピザの原型みたいなパンと肉まんを10個注文した。上海あたりの小龍包のつもりで。そのころはまだそんなに日本人は行ってなかったのだろう、店のみんながこっちに注目している。果たして、その肉まんは大きかった。
ああ。目の前の10個の肉まんはしかもピザパンの上に綺麗に並んでいる。食べてみると美味しい、がやはり中身は羊肉だった。羊肉は結構、油の匂いが強いのでだんだんつらくなる。でもみんなは、こいつは本当に全部たべるのであろうかという顔で見ている。
結局、ピザパンは持って帰ったが、羊肉まんは全部食べた。つらかった。なんで無理して全部食べたのだろうな、いろいろ考えたけど、単に負けず嫌いなだけだ。食い終わったら、店のみんなから、おお、くいやがったな、という感じが伝わってくる。その感じが大切なのだ、私の中では。
今でも、肉まんを見る度にこのときのことを思い出す。買おうとして躊躇する。肉まんはめったに食べない。またカシュガルに行く機会があったら、羊肉まんは2つでじゅうぶんだ。まるで、デッカードとうどんやの親父の会話。ふたつでじゅうぶんですよ研究所。
http://www.st.rim.or.jp/~kimu/br/224.html
この街もずいぶん変わったんだろうな。