Portbou

tapio2007-01-25

ヨーロッパ地中海側のスペイン、フランスのボーダーに、Portbou(ポル・ボウ)という小さな国境の街がある。何もない小さな街だったが、たまたま宿があったので一泊したことがある。
ここは、Walter Benjamin(ヴァルター・ベンヤミン)が、第二次世界大戦中、ナチスの迫害から逃れ、亡命の途中、自ら命を絶った場所である。
夏だった。海沿いには結構多くの海水浴客がいた。しかし、スペインの荒々しく美しい海岸Costa Bravaの他の街と比べると、なんとなく寂しい感じのするところだな、と思った。
海岸の高台に歩いて上ると、海を見渡せる墓地があった。誰もいない。静かだった。波の音が遠くに聞こえるベンヤミンの眠る墓地。老婆が一人、お墓に参っていた。
この墓地のそばに、Dani Karavan(ダニ・カラヴァン)による、ヴァルター・ベンヤミンへのオマージュ(写真)がある。断崖に、赤茶に錆びた鋼板がトンネルのように斜めに貫通していて、そこを階段で下ることができる。先には、美しく青い海が見える。ゆっくり下っていくと、階段の先は分厚いガラスで仕切られており、そこから先へは進むことができない。
当時の僕の旅のメモによれば、ガラスの表面には、スペイン語、ドイツ語、英語などいくつかの言語でこのようなことが書いてあった。
"It is more arduous to honor the memory of the nameless than that of the renowned. Historical construction is devoted to the memory of the nameless."
「有名な人々の記憶に敬意をはらうよりも、無名な人々の記憶に敬意をはらう方が難しい. 歴史の構築は無名の人々の記憶に捧げられる.」
■現在、外に出す原稿3本と卒論6本、修論3本、ワークショップ2本が同時進行。しかし、卒研生、修士ともによくやっているので、なんとか乗り切れそうである。また、新しい3年生も加わって、今週土曜日の中学校でのワークショップにも、5人全員参加してくれることになった。
実は、ベンヤミンのことを、現在、旅にでている研究室の修士課程、明石隆宏のブログにて思い出した。おお、あの街に立ち寄ったのか、と。また、同じく、修士の橋本大輔は、今、カナダからヨーロッパ、アジアときて、今はチベットにいるようだ。いろんな場所から、ハガキを送ってくれるので楽しみにしている。また、今は、ブログがあるので、ああ、元気で旅しているのだなあということがわかって良いな。3月末には、再会と土産話を楽しみにしています。
■なお、ヴァルター・ベンヤミン、「パサージュ論」については、松岡正剛さんが松岡正剛の千夜千冊にて、非常にわかりやすく紹介されているので付記しておきます。